月の砂漠

最近お父さんの歌ってくれた子守唄を思い出して口ずさむ事がある。お母さんは定番の「ね〜んねん〜ころりよ〜、おころりよ〜・・・」だが、お父さんの子守唄は決まって「月の〜砂漠を〜は〜るばると〜旅のらくだが〜行き〜ました〜・・・」だった。1番と2番が少し混じったような歌詞を繰り返し繰り返し歌い、そのうち自分の方が先に寝てしまうパターン。なんで「月の砂漠」だったんだろう??自分が歌ってもらった子守唄が「月の砂漠」だったんだろうか??
私は弟と7歳違うので、弟を寝かしつけている様子も良く覚えている。なかなかぐずって寝付かない弟を、よくお父さんは負ぶい紐で負ぶって外へ散歩に出かけたりした。私はそれがその時は恥ずかしく恥ずかしくて、「学校の友達に会いませんよ〜に!」なんて良く思ったものだったが、今考えると、とても子煩悩な良い父親だったのだと思える。
会社が終わって帰ってくる時分を見計らって、良く門の横の壁の足場に昇って外を覗いて見て待っていたっけ。。向こうからお父さんが帰ってくる姿が見えると凄く嬉しかった。
車の運転中、「月の砂漠」を口ずさみながら、小さい頃のお父さんとの1シーン、1シーンが不思議に思いだされる。
父は今はもう私に「月の砂漠」を歌ってくれる事はない。お父さんの声を聞く事も、もうたぶん出来ないと思う。男の人としてはちょっと高めな年の割には声だけは若い感じのあの声を私は一生忘れる事はない。
今度父の所へ行ったら、耳元で私が「月の砂漠」を歌ってあげようと思う。私の歌が聞こえるだろうか?