昔の古巣

独身時代勤務していた会社のHPに、私が携わっていた研究開発技術をまとめた資料が掲載してあった。あまりに懐かしく資料をダウンロードし、読みふけってしまった。
私は某工業フィルム会社の研究部に所属していたのだが、そこで経験させていただいた業務は、今、私の仕事のベースになっている。現在は全くの別分野の業界で今は仕事をしているのだが、ベースになっている「ものづくり」は共通のところであり、その醍醐味がベースであることは、全くの共通なのだ。
研究部へ所属していた新人だった私は、ある開発プロジェクトの中で大きなミスを犯し、試作品に大きな損害をかけてしまった事があった。テストマシーンにかける大量のテスト液の処方を間違えてしまったのだ。取り返しのつかないミスにパニクッテいた私に上司は、「このテスト液では、どのような結果であり何故だめなのかを、明確に追求すればよい。研究部にとっては、それが成果物であり、資産になるのだから。」と指導してくれた。「失敗の中に成功への鍵を見出す。」この考え方を実践する事を上司から身をもって学ばせてもらった。
現在、あの頃とは違う業界で仕事をしている私だが、あの時代に経験した一つ一つは、全て今に活かされていると実感する。年月で言えば、退社して15年も経つのだ。
巡りめぐって現在、昔の古巣である、その某企業と仕事上、少々関わりを持てるようになった。結婚当初、状況から退社する事となったのだが「いつの日か、また、何らかの形で某企業との関わりが持てるようになりたい!」と密かに願望を抱き続けていた。十数年経ち、ようやくあの頃の思いを叶えられるようになった今、叱咤激励をしてくれていた上司や同僚のいたあの頃を懐かしく想う。
結婚が決まり退社して暫らく経ったある日、社長から自宅に電話かかってきて「贈りたい物があるので社長室へ来てください。」と連絡を受けた。社長室に出向いていくと社長は、私にバカラの花びんをプレゼントしてくださった。1時間程だろうか、社長室で色々お話をした。「あなたが入社したその日の入社式、一番前で真剣に目を凝らして私の話を聞いていたあなたの目を、今でもハッキリ覚えていますよ。」とおっしゃってくださった。男女雇用機会均等法が施行して初めての年、研究部に配属になった、たった一人の女子新卒者だった私に、恐らく会社としては、初めての存在として良くも悪くも注目していたに違いないと思う。それなのに、何の結果も出せずに退社する事になってしまったと、当時、私は社長や会社に申し訳けなく思っていた。しかし、社長を初め会社は温かい心遣いで私を送り出してくれた。そして結婚式には、取引会社の某米企業の担当チームから「CONGRATURATION!」という横断幕が贈られてきた。
十数年経ち、またこのように昔の古巣と関わりを持てるようになった現状を、もう亡くなってしまった社長は、どう天国から見てくださっているだろうか?入社式の日、社長の話を聞き入っていた、あの時の目の輝きを、今の私は持ち得ているだろうか???
再来週、久しぶりに昔の古巣へ行く事になり、当時の同期の数名が集まってくれるようだ。。。嬉しいネ。。。